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Column
経営の知恵袋− 七転八起 −

2022.03.09

「労働者代表」を 適当に決めてはいけない理由

労働・社会保険関連手続き, 労務顧問, 就業規則, 相談顧問

時間外労働に関する労使協定(いわゆる36協定)や変形労働時間制に関する協定等について、労働者代表の選出方法には様々な注意点があります。労働者代表を適当に決めるとどのようなリスクがあるでしょうか。

はじめに

2019年4月以降、時間外労働の上限規制が厳格化されました。厳格化に伴い、いわゆる36協定や変形労働時間制に関する協定など「労働時間に関する労使協定」についてもより注意して締結する必要性が高まっています。労使協定の成立要件である「労働者代表の選出方法」について、改めて解説をします。

 

労働者代表とは

労働基準法上、いくつかの手続きにおいて労働者代表の意見や押印を求める必要があります。例えば時間外労働に関する協定の締結(いわゆる36協定)、1年単位の変形労働時間制に関する協定、または就業規則を作成・変更する場合等、協定締結や意見を述べる当事者として当該事業所の「労働者の過半数を代表する者」を選出しなければなりません。

 

過半数の労働者で組織する労働組合がある場合は「組合委員長」等を代表とすることができますが、現在は労働組合がある企業の方が少ないため、多くは「労働者の過半数を代表する者」を都度選出することになります。また、労働基準法上の管理監督者は労働者代表となれません。管理監督者は労働者を監督する立場であり、労働者の意見を代表する者として相応しくないためです。

 

必要な要件

過半数労働者の代表者の選出方法については、以下2つの要件があります。


  1. その者が労働者の過半数を代表して労使協定を締結することの適否について判断する機会が、当該事業場の労働者に与えられていること
  2. 当該事業場の過半数の労働者がその候補者を支持していると認められる民主的な手続きがとられていること

つまり「1」について、例えば36協定締結の際には「あの人は時間外労働の労使協定代表者として相応しい/相応しくない」と判断できるようにしなければならないため、会社が勝手に労働者代表を選任したり、自動的に役職者を労働者代表としたりといった行為は不適当です。

 

また「2」について、投票や挙手、回覧などの民主的な方法で選任すべきとなります。例えば、「もし反対意見があったら○月○日までに連絡ください。連絡がない場合は賛成とみなします」などの方法は賛成反対を明確に意思表示させる方法でないため望ましくないとされています。

 

労働者数の数え方

労働者の過半数の分母となる従業員の範囲について、社員かパート・アルバイトかに関わらず「労働契約に基づき労働力を提供している者すべて」含みます。そのため、管理監督者自身や年少者のアルバイトもその人数に含むべきとされています。また、病気などで休職中の者であっても原則として労働者数に含みます。

 

いいかげんに選任するリスク

前述のようなルールを守らず労働者代表をいいかげんに選出した場合、労使協定等自体が無効となるリスクがあります。つまり、例えば36協定であれば「労使協定を結んでいない」ことになり、直ちに労基法違反の状態になります。仮に未払い残業代など労働時間をめぐって係争中の場合、有効な36協定がない状態であることは企業にとって不利な材料となります。

 

また、1年単位の変形労働時間制に関する労使協定が無効とされた場合、原則の通りの法定労働時間に則って残業手当や休日割増賃金等を計算しなければならないため、未払い賃金が発生してしまうリスクがあります。

 

アイアールでは36協定の他、さまざまな労務関係手続きの代行を行っています。労務についてお困りのことがございましたら是非アイアールまでご相談ください。