2022.06.01
就業規則「周知」の 具体的方法について
就業規則
従業員数常時10人以上の会社は就業規則を作成し、労働基準監督署に届出しなければなりませんが、同時に社内で「周知」する義務を負っています。周知方法についての注意点を解説します。
就業規則作成&届出義務の対象
労働基準法第89条では、「常時10人以上」の労働者を使用する使用者(会社)は、就業規則を作成し労働基準監督署に届出する義務を負う旨定められています。この「常時10人以上」とは、正社員やパートなどの雇用形態に関係なく、所属している労働者※が常態として10人以上いることを指します。また、就業規則の届出は「事業所単位」で判断することになるため、本店、支店など複数の拠点がある場合はそれぞれの事業所において常時10人以上であるかで判断します。
※派遣社員は原則として労働者数に含みません。また、出向者については「在籍出向」の場合は出向先・出向元両方で人数カウントし、「移籍出向」の場合は出向先においてのみカウントします。
なお、昨今の労使トラブル予防の重要性を考えると、10人未満の事業所であっても就業規則を作成し、届出することが望ましいでしょう。
周知とは
周知とは「労働者が見ようと思ったらいつでも見ることができる状況にすること」を指します。労働基準法第106条には、「使用者は、就業規則を、①常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること、②書面を交付すること、③その他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない」と定められています。就業規則の周知義務を果たしていない場合は労働基準監督署からの是正勧告や指導、場合によっては罰金が科されるケースもあります。
なお2022年2月には、この「就業規則周知義務」を会社が果たしていないとして、就業規則に規定された「固定残業制度」自体を無効とし、固定残業制度を設けていたにも関わらず未払い残業代の支払いを命じた判決が出されました。金銭的なリスク対策のためにも就業規則周知は以下の方法で正しく行いましょう。
①常時掲示・備え付け
従業員が誰でも手に取れるような場所に就業規則を備えておくことを指します。
- 鍵のかかっていない共有のキャビネットに冊子を保管する
- 誰でも立ち入れる場所に掲示する
なお、備え付けた就業規則を「閲覧のみ」に限定し、社内の重要書類の紛失や悪用防止の観点から「持ち出し禁止、コピー・撮影は許可制」とすることは可能でしょう。しかし必要以上に就業規則閲覧から労働者を遠ざけるような管理体制は会社に不利に働きかねないので、隠さずに堂々と設置した方が良いでしょう。
②書面交付
「就業規則コピーを従業員に渡す」という周知方法も可能です。書面交付の際に受け取った確認のサインをもらうなど、周知記録を残すと良いでしょう。
③その他
就業規則P D Fデータを誰でもアクセスできる社内サーバーに保管するなどの方法を指します。パスワードなどで閲覧制限をかけた状態では周知義務を果たしていないとみなされる可能性があります。
説明会
賃金(給与・賞与)や退職金、労働時間など重要な労働条件にかかる就業規則の規定・改定の周知については、説明会を開催するほうが良いこともあります。説明会を開く場合は参加者名簿や議事録等を作成し、周知した事実を記録しておきましょう。
アイアールでは就業規則の作成および従業員様への説明会も開催いたします。
就業規則を見直したい、相談したいなどございましたらぜひご連絡ください。