2021.03.26
給与のデジタル払いについて
相談顧問, 給与計算, 賃金規程
給与の支払いを「PayPay」などの電子マネーで行えるようにする議論が厚生労働省の審議会で進んでいます。給与支払いに関する法律についての解説とともに、給与のデジタル支払いが社会に与える影響を考察します。
賃金支払いの5原則
労働基準法では賃金の支払いの際の5つの原則が以下の通り定められています。
賃金支払い5原則 | |
1.通貨払い | 現物支給はNG |
2.直接払い | 本人に支払う |
3.全額払い | 期間中の金額を払う |
4.毎月1回以上払い | 2ヶ月に1回などはNG |
5.一定期日払い | 毎月〇日など同じ日に払う |
例外として、会社と労働者の同意があれば、銀行その他の金融機関の口座等への振り込みなどで給与を支払うことが認められています。つまり法律的には、「原則は現金で給与支払いをする義務があるが、同意があれば振り込みでも良いよ」となっています。
給与のデジタル払いとは
前述の賃金支払いルールを一部変えて、給与支払い方法の選択肢として「現金払い」「金融機関口座への振り込み払い」以外に、PayPay(ペイペイ)やLINE Pay、メルペイなどスマートフォン決済サービスなどを提供する「資金移動業者」の口座への送金も認めようとしています。
具体的には、資金移動業者が発行するプリペイド(前払い)式の給与振り込み用カード「ペイロールカード」への送金が想定されています。ペイロールカードとは給与支払い用のカードで、会社から直接ペイロールカードに「チャージ」することができるもので、アメリカでは既に普及しています。利用者はペイロールカードに入金された給与をATMで引き出すこともできるし、電子マネーのまま決済に利用することもできます。
誰が得をする?
デジタル支払いの恩恵を最も受けるのは、外国人労働者と言われています。
外国人は銀行口座の開設をすることが難しく、銀行振り込みに代替する給与支払い手段への需要が元々ありました。電子マネーは海外送金のハードルが低くなる点でも、多くの外国人労働者にとって喜ばしい変化となるでしょう。
あるいは、日雇い労働者やアルバイトに対して、電子マネーで「日払い」「週払い」などの選択肢を企業が取りやすくなるという意味において、非正規労働者、求人をする企業双方に役立つ可能性もあります。逆に、初期段階では毎月固定給の正社員の多くは、まとまった金額を電子マネーのウォレット(財布)に送金されることを希望しないでしょう。
給与計算、給与支払いでお困りの際は、アイアールにご相談ください。