2021.10.29
労働基準法「減給の制裁」について
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遅刻や素行不良などの問題に対して会社が従業員に減給のペナルティーを与える場合、労働基準法上の制限を受けます。
労基法第91条には次のように決められています。
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない
①就業規則上の根拠
懲戒処分として減給をするためには、就業規則に「懲戒の一つとして減給があること」を定めておかなければなりません。そして「どんなことをした時に減給というペナルティーを受けるか」についても規定されている必要があります。
*行為と罰が釣り合わないものは、たとえ就業規則に規定されていても認められない可能性があります。
②1回の限度
一つの事案について、減給の限度は「平均賃金の半額まで」に制限されています。この「一つの事案」の数え方について、「遅刻1回=1つの事案」と数えることも可能ですが、就業規則に「1ヶ月の遅刻回数が3回以上になった場合は減給とする」と規定している場合は「3回遅刻して一事案」と数える必要があります。
なお、平均賃金は1日単位で計算され、減給対象となる事案が起きた月の直前3ヶ月の賃金総額をその期間の暦日数で割って求めます。例えば月給20万円の従業員の平均賃金はおよそ6,522円となるため、この場合の減給の1回の限度額は「6,522円×0.5=3,261円」となります。
なお、遅刻した時間分の賃金を差し引くことは通常この「減給の制裁」に当たらず、ノーワーク・ノーペイの原則により当然に差し引くことができると考えられているため、遅刻に対してのペナルティーは「不就労時間分の控除+減給の制裁金」とすることができます。
③1ヶ月の限度
減給の制裁には1ヶ月の限度も定められています。1ヶ月のうちに複数回の問題行為があった場合でも、減給の制裁金は一賃金支払期における賃金総額の10分の1以内にしなければなりません。当月に控除しきれなかった制裁金については翌月以降に繰り越すことができます。
「罰金」と「減給の制裁」の違い
よく似た事例として「罰金」があります。例えば「ノルマ未達の場合は罰金◯◯円」や「◯ヶ月以内に退職したら研修費◯◯円を負担」などの罰金制度は、労働基準法第16条(損害賠償の予定)で禁止されています。
降格による減給との違い
例えば役職から外れたことにより役職手当がなくなるなど、降格に伴う給与の減額は一般に労働基準法第91条(減給の制裁)の規制を受けません。ただし、降格の根拠となる人事評価制度や賃金制度がきちんと周知され、実際に運用されていることが前提となります。能力不足や成績不良により給料を下げたい場合は、下げる根拠を説明できるように賃金制度を整備してください。
賃金規程の作成その他については、アイアールにご相談ください。